煙草の煙が目に染みる

感情の垂れ流しが、目に、心に染みるように。

常田大希率いる「millennium parade」の"視覚的"表現方法

 

King Gnuというバンド、もう皆様ご存知であろう。

 

以前このブログにて俺の知らないところで"King Gnu"が流行っている - 煙草の煙が目に染みるという記事を書いたのだけど、この1ヶ月後に「白日」をリリース。そして現在ではYouTubeで2億回再生という驚異のバズりっぷりを見せつけた。正直、ここまで流行るとは思わなかった。しかし、King Gnuのおかげでバイト先の女の子と話してる中、音楽の話題になって「いや〜〜〜〜King Gnu好きなんすよ〜〜〜〜」なんて言ってたら「King Gnu私も好き!」ってなって話が盛り上がった。ありがとうKing Gnu

 

白日 / King Gnu

 

さて、なぜここまで白日がバズったのか?という疑問点が浮かんでしまう。しかし、これは完全に戦略的なものではないのか?と感じてしまうのだ。井口の澄んだファルセットからはじまり、バンドの演奏とともに常田のラップへと繋がっていく。大切な人を失う喪失感を湛えたメロディはJ-POP的な哀愁へと接近し、一聴しただけで多くの人の心を掴む。一方で、Aメロ→Bメロ→サビというわかりやすいJ-POPの展開にとらわれない構成は、この曲を単に聴きやすいバラードとして終わらせない。このように、聴いてすぐに耳を奪う聴きやすさと、バンドが追求してきたサウンドの美学、この二つが同時に存在していることが、長く聴かれている要因ではないか、と感じている。

 

そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのKing Gnu。その中で、King Gnuのフロントマン、常田大希が率いるプロジェクト、「millennium parade」に関しても、勢いを増しているのだ。

 

日本で活動するバンドとして王道のロック・ポップスを志向するKing Gnuに対して、常田が所属するクリエイターチーム「PERIMETRON」と一体となって音楽・映像・空間演出などをプロデュースするmillennium parade。ライブでの3Dビジュアルやサラウンドの音響を駆使したそのパフォーマンスはまさに総合アートであり、その全貌を理解するには音源だけを聴いているのでは不充分なのである。

 

Veil / millennium parade

 

「millennium parade」第一弾の楽曲である。ここで私が衝撃を受けたのがermhoiの浮遊感溢れる歌声。敢えて感情を殺し切っているような淡々とした不思議な歌声がインパクト抜群で新プロジェクトの1stシングルとしてこれ以上ないような楽曲となっている。

さらに、音源だけでなく、MVにも注目して欲しい。MVは、白い部屋の中央にうず高く積まれた白いトルソーの残骸の上で、何本もの管につながれた裸の人形が歌うというもの。この曲では「宇宙の始まり」というのがひとつの重要なモチーフになっている。あえてドラマを作らず、淡々と1シーンで終わるMVは、まるでmillennium paradeの世界のオープニングのように感じてしまう。

 

Stay!!! / millennium parade

 

そして3rdシングル、Stay!!!。millennium paradeのボーカリストはermhoi固定なのかと思わせといて突然大物シンガーCharaをぶっこんで来た3rdシングルである。Veilや、2ndシングルであるPlanktonと比較しても、キャッチーに仕上げられているように思える。

さて、こちらもMVに注目してみると、実写とアメコミ調のカートゥーンを組み合わせたもので、Veilとは少しかけ離れたものに思える。しかし、女の子と飼い犬がエサを巡って戦いを繰り広げるというコミカルなコンセプトの映像の中に、セクシャルな匂いのする歌詞もあり、1つの「愛」の歌であることが想起させられる。常田の作るmillennium paradeの詞は、この曲のように「愛」であったり、「命」であったりと、人間の営みの根源を想起して作られているように感じてしまうのだ。

 

Fly with me / millennium parade

 

そして、先日公開された最新曲、Fly with me。このMVは大きく分けて2つの視点を表現しているように見える。ゲームのプレイヤーであるカオナシのような化け物である富裕層の生き物と、ゲーム内、水晶内で生きるMVの主人公のような人物の2つである。最終的には、ゲーム内で生きる主人公がカオナシのようなゲームのプレイヤーを2丁拳銃で撃ち殺す。これは、「自由」というワードが想起できる。目上の人間に操作されることを拒否し、人間の営みの本質である「自由に生きなければならない」というようなメッセージ性が感じ取れるのだ。

 

millennium paradeは、音楽という「聴覚」での表現の枠を超え、今や映像や芸術という「視覚」にまで訴えかけるまでに手を広げている。これは、豊かな音楽での表現に加えて、映像の完成度が大変高いのも魅力の一つになっているように感じるのだ。

King Gnuに関しても、白日の極限まで漂白された世界とあの曲名のタイポグラフィは楽曲の美しさと残酷さをこれでもかと浮き彫りにしているし、Teenager Foreverの、「100万円もらったら何する?」というMVは同曲にたぎるロマンとKing Gnuというバンドの本質をユーモアたっぷりに描き出している。millennium parade、King Gnu、いずれも、映像によって楽曲に込められた物語や空気感が明快に具体化されている。しかし、millennium paradeでは、より常田の本質に近い「人間の本質」をテーマとし、受け手に向けて感情移入の入り口を開いている感覚がするのだ。

楽曲に隠されたものを映像が暴き出し、その映像が音楽をより豊かなものにする。その相互作用によって進化するmillennium paradeは、アートとしてもエンターテインメントとしても、興味深く、より面白いものとなっていくのだ。

 

以上。また何かあればよろしく。

 

 

Fly with me

Fly with me

  • 発売日: 2020/04/22
  • メディア: MP3 ダウンロード