煙草の煙が目に染みる

感情の垂れ流しが、目に、心に染みるように。

FACTの系譜「SHADOWS」は進化している

 

a fact of life / FACT

 

皆様、「FACT」というバンドをご存知だろうか。

 

白い能面姿とエレクトロを取り入れた新感覚ラウドロックで、国内を飛び越え、アメリカのレーベルからデビュー。「SXSW」 「Warped Tour」といった海外の大型フェスに出演など、様々な活動により、2000年代のラウドシーンの根底を作り上げたバンドとして、今も尚語り継がれるバンドである。

 

私がFACTを知ったのは確か中学校のころで、いわゆるBUMPとかアジカンに影響されてアコギを練習してロックかっけー!やべー!ってなってた時代である。自分でルーズリーフに書きながら作詞作曲するもクソみたいな曲しか出来ずにゴミ箱に捨てるっていう黒歴史の時代でもある。

そんなロック好きな一般中学生が、TSUTAYAでCDを借りまくってた時に、FACTが「能面集団が交通事故にあって復活した!」みたいな見出しでピックアップされていたのを見つけた。しかし、その時の私はBUMPとかの王道ロックみたいなものしか聴いてなかったから、あんなゴリゴリのハードコアだったりラウドロックに対しての耐性がなかった。だから正直あんまりハマらなかったのだが、高校大学になるにつれ耐性ができてきて、ゴリゴリハマってしまい、FACTのジャパンツアーに行くまでに至ってしまった。

今現在でも日本ラウドシーンの礎を築いたバンドと言っても過言ではない素晴らしいバンドだと思う。このバンドがいなかった場合、今のSiMやcoldrain、Fear,and Loathing in Las Vegas等の立ち位置も変わっていたと思う。それほどまでに偉大なのだ。FACTというバンドは。

 

choices / FACT

 

しかし、FACTは2016年に突如解散した。

理由は、「今が一番カッコいいから」っていう理由が公式である。不仲説とか音楽の方向性の違い等の意見を言っている人もいるのだが、私からすれば本当にそうなんだろうな、と確信している。

 

そんな中、FACTの元メンバーであるHiro(Vo)、Kazuki(Vo&Gt)、Takahiro(Vo&Gt)が、2016年のFACT解散と同時に立ち上がり、再び結成したロックバンドがある。

それが、今回ご紹介したい「SHADOWS」というバンドである。

SHADOWSは、FACT解散と同年にライブレコーディングによるファーストEP『Extrance』をリリースし、デビューを飾った。その後、「PUNKSPRING」「SUMMER SONIC」といった国内の大型フェスに立て続けに出演。2017年にはファーストフルアルバム『illuminate』をリリースした。

 

ネットのブログなどを見ていると、SHADOWSはFACT初期のサウンドに近いものがあり、FACTって名乗っててよかったんじゃないか?っていう意見もちらほら見たことがある。しかし、FACTとSHADOWSは完全に違うのではないかと感じている。SHADOWS自体が、自分たちの音楽を90’s メロディック・ハードコアをリバイバルさせた、New Melodic Hardcoreと呼んでいる。その為、FACTが様々な音楽をミックスさせたラウドロックならば、SHADOWSはこのNew Melodic Hardcore一本筋のバンドになっている。根本のジャンルが違うのだ。

 

では、実際にどう違うのか。

 

Chain Reaction / SHADOWS

 

この軽快なハイスピード、胸を掻き立てるようなアツいバンド・アンサンブル、生命力溢れるメインボーカル・Hiroの天性の歌声。前バンドから培ってきたスキルと個々の魅力を最大限に引き出している。

しかし、前バンドと明らかに違うのは、ラウドでありながらもこの聴き心地の良さだ。メロディアスなリフや軽やかなリズムで、サウンド自体もとても聴きやすい。エモーショナルなサウンドはそのままに、ポップな印象も強い。 特にドラマチックな曲展開も、聴き心地の良さの大きな要因となっている。 前半はアグレッシヴなサウンドを全開に突き進み、中盤では楽器の音が抑えられてコーラスが爽やかに響き、後半は再び盛り上がり華やかなまま終焉を迎える。 じっくりと練られた構造ではあるが、ストレートな起承転結を描いている。

90年代ロックらしい真っ直ぐなサウンドや曲展開も、SHADOWSならではの魅力である。

 

BEK / SHADOWS

 

ザラつきのある野性的サウンドとキャッチーなメロディ、泥臭いHiroのボーカル。リズムの転調が重なり、何度も形を変えては疾走するように駆け抜けていく。 ヘヴィーであることに固執せず、身軽に音を楽しんでる印象で、そのフットワークの軽さが二転三転するドラマチックな曲展開に繋がっている。 重たいサウンドを掻き鳴らしたまま突っ切るというのも彼らの得意分野ではあるが、SHADOWSでは変化を重ねることや、ストレートなアプローチの中に見える音ひとつひとつを明確にすることで、細かな音の違いを楽しんでいるようにも思える。ここがFACTとは違った、New Melodic Hardcoreの部分なのであろう。

また、なんといっても、彼らの楽曲に欠かせないシャウトが気持ち良い。全てを吐きだすように男臭く叫ぶ姿はとてもエモーショナルで、人間的だ。普段こういうノリには縁がない人も思わず拳を突き上げたくなるような、リスナーの心を巻き込む熱い魂をジリジリと感じる。

 

当然ではあるが、SHADOWSとして活躍していれば、絶対に元FACTの~っていうレッテルが必ずついてくるものだと思う。ライブや音源等を出しても、FACTの方がよかったという意見や、FACTと名乗っていいのでは?という意見も少なからず出てくると思う。しかし、彼らは自分たちがこれまでいたシーンに戻ってきてくれた。そして、また1からバンドを始め、もう一度シーンに返り咲いている。そんな姿が、私にはとてもカッコよく見える。

 

今年で結成4年目。新型コロナウイルスによって京都大作戦にてライブ予定だったものが中止にはなったものの、現在のSHADOWSの姿を見てみたいと感じる。それほどまでに、魅力的なバンドなのだ。これからどのような活躍をしてくれるか楽しみである。

 

以上。また何かあればよろしく。

 

illuminate

illuminate

  • 発売日: 2017/04/26
  • メディア: MP3 ダウンロード